人間は共同体子育ての生き物なんです
自然人類学研究者である長谷川眞理子博士によると、チンパンジーや鹿など人間以外の哺乳類と人間の比較研究を行った結果、人間は親や親類の手を借りながら子育てをする動物だそうです。
人間の子供は独り立ちするまでに非常に長い年月がかかるために、とても親だけでは同時に複数の子供を育てることができない。ところが子育てを終えた親の親(祖母や祖父ですね)が長生きしているので子育てを手伝うことができる。
あるいは兄弟の家族などと近所で暮らしたり一緒に暮らしている共同体家族を構成していると(現在のフィリピンやモンゴルや過去の日本)、お互いが助け合って子育てを手分けしてすることができる。ゆえに多くの子供を育てる事ができるそうです。
ひるがえって現在社会はどうかというと、戦後欧米文化が流れ込み子どもは親と同居せず独立して住む核家族化が進んでいます。核家族が与えるメリットは、親は親、子どもは子どもという個人の自由です。他人から干渉を受けない自由がある。
直系家族のシステムが色濃かった昭和中期に生まれた私は、長男が親の職業を継ぐという直系家族の教えと、人にはそれぞれ自由があり、自分の希望に沿って人生を切り開くべきだという核家族の思想にはさまれ随分と悩みながら人生を送ってきました。
さて核家族によって個人の自由は得られたとしても、人々は親や親類と離れたところに住むようになり、子育てにおける手助けを得る事がしにくくなってきました。
子育てにおける費用の増大が少子化の原因のように言う意見を耳にしますが、むしろ高校の無料化などが始まっており、公費補助は以前より充実してきているように思います。
子育てにおける負担の増大は、人間が本来行ってきた助け合って子育てをするというシステムが核家族化によって失われつつあることによって、生じているのではないでしょうか。
核家族によって、親から干渉されることもなくなり自由は手にしたものの、子育てにおける負担の増大を生み少子化が進んでいる事への対策は、ひょっとして過去を参考にすることが大切なのかもしれません。
核家族と直系家族と少子化に思う
2024年9月12日 コラム