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ジクソーパズルの完成を目指す


日経メディカル 2004年1月 p173
はざま医院 伊藤伸介
 が医師になったのは二十余年前である.出身大学の内科医局には総合内科医を育てるコースはなく,初期研修のあと各人専門の科を選択するしかなく,私は呼吸器内科を選択した.その後は将来の開業を視野に入れ専門以外のこともできるだけ学ぶ姿勢を取りながら研鑚を重ねたが,与えられる患者は呼吸器疾患の方がほとんどと言う状況で,自ずと守備範囲は限定的なものにならざるを得なかった.つまり呼吸器内科と言う専門分野を中心とした得意領域が形成された.このような経歴は,今日新たに開業しようとする医師たちの中にも多いものであろう.
 さて8年前,内科小児科を標榜して開業したが,日々の診療の中で目の前の患者から様々な疑問が呈せられても,満足行くように答えられないことが未だ沢山ある.勿論事前にあらゆる事に精通し,一人一人の患者から発せられる個々の問題に即座に答えられる自分を用意してから開業するのが理想なのかも知れないが,どう考えても膨大に広がり行く医学知識について,事前に全て知っていることは不可能としか思えない.全てを知りえた頭脳を完成したジグソーパズルに例えるなら,呼吸器内科と言う一部分だけがある程度完成したジグソーパズルが開業する前の私の頭脳である.その後も目の前の疑問を軽視せず,一つ一つ丁寧に解決することでパズルを完成させるようなつもりで頭脳と言うジグソーパズルをワンピースずつ埋め続けているが,まだ完成にはほど遠い.六十歳になったとき,ほぼ完成した状態になれればと言うのが,私の夢である.