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朝日新聞朝刊 「声」 2001年1月26日 
(読者投書欄)

医療のエラー防止に一丸で

開業医 伊藤伸介(44)
 「先生,最近の病院っておかしいですね」長年当院へ通院している患者さんから,ショッキングな話が出た.患者取り違え,注射と経管栄養剤の誤注入,そして筋弛緩剤の管理ミスなど,いくつも容易に挙げられる.私も医院開設者と言う責任ある立場から,このような事件が報道される度に,心を引き裂かれる思いである.
 昨年まで接客マナー向上を目指し,職員一同研修を積んできた.しかし繰り返される医療ミスに,当院は一診療所に過ぎないが,新年の課題としてエラー対策と取り組むことを私は誓った.人間はエラーを起こすものである.多くの面で機械化することができず,人間の力に頼らざるを得ない医療では,いかに各自が責任を持って与えられた責務を全うし,他人の犯したエラーについてまで,お互いに指摘し合える環境を作れるかと言うことが大切であると言われている.
  患者と医師が信頼し合い,心からお互いの症状や悩み,そして医療の限界などについて,常に語らい合えること.これは良い医療を実践するための基盤である.人間の力によって支えられている医療において,エラーを全くなくすことは,正直言って不可能である.しかしエラーに留まり事故に至ることのないよう,職員同士お互いの犯したエラーについて日々報告し合い,原因についての知識の共有化と対策を講じ,医療への信頼を確固たるものにして行くことを,新年に誓いたい.