南圭会学術講演記録に戻る

南圭会

小児の下気道感染症について〜最新の話題〜

Copyright (c) 2009 Nankeikai All Rights Reserved.

平成21年6月16日(火)

大同病院 副院長・小児科部長 水野美穂子先生
 小児の下気道感染症(肺炎 気管支炎 細気管支炎)は大同病院小児科の入院患者の約30%と最も多く 外来での患者数も多い。下気道感染症の中でもマイコプラズマやRSウイルス感染症の頻度が高く 今回はこれらの疾患について入院症例を提示しながらとりあげた。また 近年ワクチン接種既往例の百日咳発症が問題となってきており これらの最新の話題もとりあげたい。

1. マイコプラズマ感染症について

マイコプラズマは細胞壁のない特有の形態で 先端のTip構造が気道粘膜上を滑るように移動して接着し、マクロファージを活性化する。活性化したマクロファージから放出されたIL-8やIL-18などのサイトカインにより気道炎症を生じる。マイコプラズマ肺炎では小葉中心性陰影や気管支壁の肥厚などの画像所見がみられるが 免疫反応の違いや細菌感染合併の有無により陰影が異なると考えられる。(1)

マイコプラズマによる下気道感染症は当院での入院例を検討すると 乳児期には少なく 2歳以降の幼児期から学童期にかけてが多く RSウイルス感染症より年齢が高い傾向があった。(図1)マイコプラズマ下気道炎は喘鳴を聴取することが多く 気管支喘息発作の誘因になることはよく知られているが(図2) 当院の症例でも同様の傾向にあった。昼間は解熱していて夜になると高熱になる熱の日内変動も比較的よくみられる。今回は 感染により一過性に喘鳴が悪化してmPSL点滴を必要とした5歳女児例、病初期から呼吸障害が強く酸素やmPSL投与を要した12歳男児、肺炎球菌との混合感染とみられる2才女児例を報告した。

2. RSウイルス感染症について

RSウイルスによる下気道炎は乳児期から3歳ころまでみられる。(図3)入院例のうち酸素投与を必要とした重症例と酸素を投与しなかった例を比較検討した。年齢分布に差はみられず 画像所見では酸素投与群は細気管支炎により気腫状変化がみられた。(図4)また酸素投与群では喘息の既往もしくは兄弟に喘息の既往のある例が53.3%にみられた。下気道感染症以外の合併症として平成21年1月から6月までの6ヶ月間に熱性けいれんが11名あり(男児8名女児3名)数分間の強直性けいれんのあと30分以上の意識障害を5/11名、同日2回のけいれんを3/11名に認めるなど 単純型熱性けいれんとは異なる病態と考えられた。下気道症状を認めず けいれんのみの症例もみられ、注意を要する。

3. 百日咳について

近年百日咳の報告数が増加傾向にあり そのほとんどが成人の百日咳であり 大学生などの集団発生も報告されている。症状が典型的でないため診断が遅れることが多く 感染源対策として留意が必要だと思われる。DPTが接種してあっても「長引く咳こみ」「夜間の咳の悪化」「咳による嘔吐」などの訴えがあった場合は百日咳の可能性を考慮すべきである。気管支喘息の既往があるため「喘息発作」と思っていて受診のタイミングが遅れた20歳の大学生の例を報告した。

 乳幼児の下気道感染症は気管支喘息の発症もしくは発作に関わっており 繰り返す症例に関しては「喘息の可能性」が高い。このような例は感冒時にも早めに治療を開始するなどの配慮が必要であると考える。

(1) 田中ら マイコプラズマについて 画像診断vol23.No6 622-635 2007

図1 マイコプラズマ感染症の年齢分布(大同病院 平成20年入院例)


図2 国立感染症研究所 報告資料より マイコプラズマ感染症に合併する喘鳴の頻度

df32431喘息頻度

図3 RSウイルス感染症の年齢分布(大同病院 平成20年入院例)



図4 酸素投与を必要としたRSウイルス肺炎の2歳男児
1512544_20070123_CR_4001_4001