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南圭会

「関節リウマチの診断と治療2007」

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平成19年5月15日(火)

藤田保健衛生大学リウマチ・感染症内科  吉田俊治 先生
1.はじめに
関節リウマチ(RA)は、左右対称性に関節が腫脹疼痛をきたし、関節機能が損なわれる。関節以外の種々の内臓諸臓器にも障害を来すことがあるため、整形外科とともに内科的診療も必要である。近年、医学の進歩により診断および治療は著しく変化している。その一端につき紹介する。
2.診断について
血液検査では、リウマトイド因子は種々の方法で測定できるが、診断のための感度や特異性には一長一短がある。最近保険適応となった抗CCP抗体は、従来のリウマトイド因子に比し感度はあまり変わらないが、特異性は著しく高い。このためRAを疑って測定した抗CCP抗体が陽性の場合には、RAと診断してもほとんど間違いがない。またMRIも早期診断に有用で、滑膜炎や骨髄浮腫は特異性の高い所見とされている。さらに血液検査のMMP3は主に関節滑膜から産生されるものであり、その高値はRAに高率にみられるが他の膠原病関連疾患でも時に見られるため、それほど診断の有用性は高くない。ただRAの診療に重要な関節破壊の予測には非常に有用である。つまりRAの初診時にMMP3が高値の場合には、6?12ヶ月後に関節破壊の進行しやすいことが予測される。
これらの指標は早期の診断や治療薬の選択に重要な情報となる。
3.治療の考え方の変化
従来、作用も副作用も弱い薬剤から段階的に使用するピラミッド方式が提唱されてきた。しかしながらRAは必ずしも生命予後のよいとはいえない疾患であり、関節破壊が早期から進行すること、早期からの抗リウマチ薬の治療により関節破壊の進行が抑制されることなどが判明してきた。このため診断確定とともに早期から抗リウマチ薬を使用することが提唱されてきた。
早期からの抗リウマチ薬の使用を強力に行うことにより疾患活動性をより低下させ、関節破壊をより強く抑制すると報告された。しかし長期間の経過観察をすると、従来の抗リウマチ薬治療では、強力に行っても必ずしも改善率は上がらず関節破壊の進行は止められないことも判明した。
4.生物学的製剤の使用
生物学的製剤とは、生物が産生する物質あるいはそれを標的とする製剤で、RAの場合には炎症性サイトカインを標的とする製剤をさす。日本ではTNFαに対する薬剤が2種類認可されている(インフリキシマブとエタネルセプト)。これらの薬剤の効果は著しく強力で、臨床的に寛解状態になるRA患者も少なからず見られる。しかも臨床症状の改善ばかりでなく、関節破壊の抑制、あるいは進行の完全な停止をきたし、ときに破壊された関節の修復も見られる。これらの効果は発症早期に使用するほど高頻度に見られる。長期間罹患後の患者では有効性がやや劣り、しかも寛解になったときに休薬後の再燃率が高い。非リウマチ専門医においては、結核をはじめとする感染症や心不全など使用すべきではない患者をきちんと除外して使用するに本リウマチ学会のガイドラインに基づいて使用することが重要である。このように強力ではあるが、感染症による入院を増加させることはなく、総死亡率もむしろ低下させる。現時点では、明らかに悪性腫瘍を増加させることはないが、長期使用時には留意が必要であろう。
RAの治療については、現在新たなパラダイムシフトがおこっている。診断確定ともに高用量の抗リウマチ薬あるいははじめから生物学的製剤を使用していく方向性が考えられている。これからは使用前および使用中の注意深い観察をしながら早期より生物学的製剤を使用していく時代になっていくと思われる。