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南圭会 「認知症の早期診断と治療」 Copyright (c) 2007 Nankeikai All Rights Reserved.
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[はじめに]
ご存知の通り、認知症は症状群であり、その原因疾患は多数あり、それぞれの原因疾患により、例えば、アルツハイマー病、血管性認知症、頭部外傷後脳症、脳腫瘍などのように、病気の性質、症状、進行などは著しく異なり、治療法、リハビリ、ケア、予防なども異なる。ここでは、原因疾患の中で頻度の高いアルツハイマー病を中心に、早期診断と最新の治療法について述べる。
[T] 早期診断が大切である
認知症では早期発見により、本人および家族などの介護者のQOLを長く維持できる。また本人の意思を尊重して将来の財産管理や治療選択、ターミナルケアなどの決定も出来る。また、アルツハイマー病には進行を緩和する薬物があり、近い将来、ワクチン療法の可能性もある。
[U] アルツハイマー病の治療法
A)薬物療法
アルツハイマー病の根治療法は、現時点ではないが、病因論としてのアミロイド・カスケード仮説(図 )が正しいと仮定すると、近い将来には、受動的Aβ免疫療法、能動的Aβ免疫療法、γ-セクレターゼ阻害薬などが発売される可能性は高い。その他、抗酸化薬、NGF(神経成長因子)療法などが現在治験途上にある。(1)
さて、現時点での治療を考えると、先ずアルツハイマー病の進行を遅延させる効果が期待できるコリンエステラーゼ阻害薬が挙げられる。更に、周辺症状BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対しては、先ず非薬物的対応が重要である。その上で、薬物投与を検討すべきであるが、不幸にして、日本ではBPSDに対する薬物使用について保険適用となっていない。しかし、現場では苦慮しているわけで、本人・家族との相談の上、欧米では適用されているガイドラインを参考にして使用することとなる。
1)認知障害(中核症状)に対して:コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスティグミン、タクリンなど)
現在、アルツハイマー病の治療薬としては、その中核症状である記憶障害など認知障害などを標的症状として、ドネペジルは世界中で最も使用されている。記銘(短期記憶)は、海馬で行われているとされている。記憶に関係する神経伝達物質アセチルコリン(Ach)は、マイネルト基底核を中心に大脳皮質へと放射されている。このAchを分解するのがコリンエステラーゼであり、その分解を阻止するのが、コリンエステラーゼ阻害薬である。しかし、これが有効に働くには反応する神経細胞が残っていることが必要である。そこで、アルツハイマー病の初期から中期(第2期)にかけて特に有効であるわけである。更に進行した場合でも当該神経細胞が存在する限り効果があることは理論的には言える。(医療経済的視点からみると難しい問題ではあるが)
日本で発見されたドネペジル(アリセプト)は、一定期間の病勢の進行抑制と症例により認知機能障害の一部軽減や生活面での改善が見られることが世界的に認められている。副作用としては、約11%にあり、最も多いのは胃腸障害で、約5%、その中では悪心、食欲不振、下痢などで多くは服薬を持続すると消失する。また焦燥感や興奮し易いなどが約1%未満にみられる。頻度は少ないが、重大な副作用に配慮して、心疾患のある人、消化器潰瘍・気管支喘息・閉塞性肺疾患などの既往のある人、パーキンソン症状のある人などには慎重投与が必要である。
THA:Tetrahydroaminoacridine(タクリン)は、1986年にアルツハイマー病に有効であると報告されたものであるが、副作用である肝障害が強いため、日本での発売は見送られた経緯がある。その他のリバスティグミン、ガランタミンは欧米では使用されて、ドネペジルと同程度の効果があるとされているが、日本では未発売である。
[V]アルツハイマー病の予防
勿論現時点では完全に予防は困難であるが、様々な疫学調査等の結果から、かなりリスクを回避することは可能である。
1)脳を刺激するプログラム
エピソード記憶、注意分割機能、実行機能を刺激することを含んだプログラムを実施する。例えば、旅行、 料理、パソコンなどが良いとされる。学習療法も同様である。
2)今までの疫学調査で有効とされること
1.野菜、果物、魚を多く摂取する。
2.運動を定期的に行う。
3.知的活動や対人交流の頻度を高める。
3)趣味の中で、有効なEvidence(証拠)のあるもの
1.社交ダンス
2.楽器演奏(どんな楽器でもよい)
3.ボード・ゲーム(囲碁、将棋、トランプ、麻雀、人生ゲームなど)
4.読書
[W]その他の疾患の治療・予防など
紙面の都合で、その他の疾患については、別の機会に触れることとする。