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南圭会

「小児アトピー性皮膚炎について」

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平成19年6月12日(火)

名古屋第2赤十字病院皮膚科 
三尾清春 先生
 アトピー性皮膚炎の発症・増悪に関する因子は肌質・アレルギー・ストレスに大別されると考えます。すべての症例に肌質は共通して存在し、これのみの場合は小児乾燥性湿疹として扱われていることが多いかと思われます。従ってアトピー性皮膚炎として治療されている多くの症例は複数の因子が関与している状態で、これが急速な改善および寛解の維持を困難にしていると思います。⇒顔面のアトピー性皮膚炎増悪過程

 アレルギー的な側面に関しては血液検査にて限定された範囲は検査が可能です。これにより定性的・定量的に診断が可能で指導にも有効に活用されています。肌質単独のアトピーに比べアレルギー的な場合は一般に発赤・腫脹・浸潤が強く炎症反応が著明となります。炎症所見が乏しく苔癬化が主体の場合は掻破衝動による側面が強く肌質・ストレス的な因子が強い傾向があります。しかしいずれの場合もアトピーによる皮膚バリア機能の低下があり易感作性が共通して存在しているためアレルギーが皆無の場合は少ないと思われます。⇒アトピー性皮膚炎での苔癬化とクレーター形成

 主体となる悪化要因がいずれにあるかの問題でこれにより治療の力点が決定されます。生活上の指導は喘息の場合に類似したアレルゲンの除去とスキンケアとなります。スキンケアは皮膚の清浄を保つこと、掻破による皮膚の損傷を抑制することが主体です。毎日の入浴と過度の入浴時間・鱗屑のこそげ落としをしないように指導します。掻破衝動の抑制は薬物療法と肉体的・精神的ストレスに対するカウンセリングによる対応となります。薬物療法は抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の内服と外用療法になります。外用療法は速効的ですが漸減すべきもので、むしろ速効性の乏しい内服を全期間通じて行なうことが、より短期間で治療を終了するために必要であると考えます。

 外用剤の強さは部位により大まかな分類が可能です。顔面陰部はweak class、それ以外はstrong以上が第一選択となります。まず、この強さで反応を確認し個々の症例に応じた外用剤の選定を行います。プロトピック軟膏は傷のない状態に使用します。薬剤の特性として刺激性を有するためです。また、プロトピックは強さ的にはステロイドと非ステロイド外用剤の中間に位置しステロイド外用剤からの離脱時に使用します。ステロイドからの離脱は強さを抑えることから始め次に量的な減量を行います。急激な脱ステロイドは非常に強いリバウンドを伴うためその適応は限られた対象となります。アレルギー的な側面が強い場合、外用剤からの離脱は3年程度を目安にして説明しています。このことから分かるようにアトピー性皮膚炎は短期間での急速な改善は一時的なものであり、かならず寛解・増悪を繰り返すので最初の時点で患者様および家族に理解していただくことが重要となります。いわゆるhospital shoppingは病態のコントロールに有害なため上記を理解していただくことは、治療において非常に重要であると思われます。増悪する因子の一つである掻破行動は精神的な側面からの影響が強い場合があり、自己完結型、友人・家族関係などが一般的に認められます。過度の内向性および特定の条件・相手に対しての過敏な反応が認められる場合は精神診療科によるカウンセリングが必要となります。

 膚防御機能の低下による易感染性により伝染性膿痂疹、herpes simplex感染が生じやすいのですが、外用剤によるコントロールは困難で内臓器障害などにより投与が困難な症例を除いて内服・点滴による全身投与が望ましいと思われます。

 以上のことよりアトピー性皮膚炎の治療はアレルゲン除去・スキンケア・日常生活における生活指導をベースとし、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤の内服と病状の変化に即応したステロイド・非ステロイド外用剤の使用が中核となり、患者の精神的な側面に留意したカウセリングを併用して長期に及ぶ治療に対する患者様の理解を得ることが重要と考えます。