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南圭会

「軽度発達障害の子どもの理解」

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平成19年10月10日(水)

 あいち小児保健医療総合センター 心療科 栗山 貴久子先生
 軽度発達障害とは、「知的に正常な発達障害」として認識され、広汎性発達障害(高機能自閉症、アスペルガー障害を含む)、注意欠陥多動性障害、学習障害、発達性協調運動障害、境界性知能が入る。これらの障害は、単独で生じる場合もあるが少なく、オーバーラップしている場合が多い。

@  広汎性発達障害(高機能自閉症、アスペルガー障害を含む)
Wingの3徴候といわれる社会的相互反応、コミュニケーション、想像力、これらのうち少なくとも2つに機能異常が認められるものを指す。これらの特徴のために特に対人関係でトラブルをおこしやすい。また、感覚過敏のために日々の生活が不快なものになっている可能性が高い。人との関わりがマイペース、よくしゃべる割に会話が成立しない、多動、集団行動がとれないことなどを主訴に就学前に受診するケースが増えている。知的に高いほど医療機関を受診する時期が遅くなり、二次障害のために不適応を来すケースも多い。
 A  注意欠陥多動性障害(ADHD) 
就学後に離席が多い、忘れ物が多いなど学習に支障をきたしやすい。家庭や学校などの複数の場面での状況をふまえて診断する必要がある。
 知的には遅れがないが、発達の歪みや偏りを中心とするため、能力面でのバランスの悪さ、行動面での問題が生じやすいのが、軽度発達障害の特徴である。一見したところ障害がわかりにくく、乳幼児期に特徴的な所見に乏しいため、早期発見につながりにくい。就園や就学に伴い、集団生活で問題行動が顕在化して診断にいたるケースが増えている。その一方で、問題行動が起こっても単に「マイペースなわがままな子」とされたり、「親のしつけができていない子」と捉えられたりする場合が多い。幼児期からいわゆる「育てにくい子」と感じることで、養育者から虐待を受けることも多い。また、同世代とのやりとりが上手く出来ず、いじめの標的にされることも多い。これらのことから、二次的な障害を来しやすい。二次障害には、抑うつなどの気分障害、チック障害、不登校、心身症など多彩である。これらの二次障害を主訴に受診し、発達歴を詳細に聴取することで、軽度発達障害の診断をうけるケースが増加している。予防こそが最大の治療であり、乳幼児健診などの乳幼児早期や集団生活開始後に問題行動を起こしたときに適切な対応をし、母子の愛着を回復することを目標に支援することが必要である。

 軽度発達障害の子どもは、母親は育児に不安を感じやすく、子どもも多動やパニックなど問題行動を起こしやすく、結果的に虐待となりやすい。特に母親に同じような傾向を認めるケースが意外と多く、このような場合、子どもと関わる中でその対応に混乱し、母親自身がパニックとなり、子どもへ過度の体罰、暴言に至る可能性が高い。このような場合、直接養育の中心となる母親の認知特性に合わせた指導を行う必要がある。また、軽度発達障害児(者)の犯罪例が共感性の乏しさや想像力の苦手さ故に、社会的に目立つ犯罪となりやすいが、実際には軽犯罪が多く、数も少なく、大多数が未診断、未治療例である。

 軽度発達障害児は、その発達特性により学習面、社会性の面などでつまずきやすく、個別指導を必要とするが、学校側に人的な余裕がない場合にはその対応が困難であることも多い。特別支援教育が推進されているが、現状は専門的知識を持った教員養成には至っておらず、混乱しているのが現状である。医療と教育の連携が、軽度発達障害児の予後を改善するために必須であるため、それぞれの垣根をこえたネットワーク作りを行う必要がある。