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南圭会

「肺癌診療の基礎知識」

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平成18年11月8日(水)
名古屋大学呼吸器外科 j助教授
横井香平 先生
 近年の肺癌の増加は目覚しく、10年程前から日本人男性の癌死亡率の中で1位となっています。また女性発生例も増加しており、若い女性の喫煙者を見るにつけ将来が危惧されます。

 そのような状況の中で、日常診療における肺癌の基礎的な知識を復習する意味で、今回お話させていただきました。肺癌の発見方法、診断の進め方、治療方針の決め方、さらには治療方法について、最近の知見を交えながら御説明します。

 発見方法(どんな風に見つけられているか)

肺癌の発見動機として、自覚症状が52%、他疾患フォロー中25%、集団検診19%の順です。従って皆様の外来診療で約80%の肺癌患者さんが見つかると言うわけです。また発見動機別に見つかった肺癌の病期(進行度)を見てみますと、自覚症状で発見される肺癌の70%ほどが進行癌であるに対し、他疾患フォロー中や集団検診で見つかる肺癌は、その60%が切除可能な比較的早期にものです。つまり日常診療中肺癌を疑わせるような症状を呈していない患者さんにも、定期的(年1回)に胸部写真を撮ることによって、治し得る肺癌を見つけることができると考えられます。

 診断の進め方

 痰の多い方やヘビースモーカーには喀痰細胞診が有用なことがありますので、年に一度は施行してください。一般的には胸部単純X線写真を半年から年1回撮影します。できれば正面と側面像(左右どちらからでも良いと思います)を撮ってください。読影上の留意点としては、必ず前の写真と並べて比較して見て下さい(比較読影)。そうすることによって、1枚では分かり難い異常影も鮮明になって見えてきます。また読影する手順を自分なりに決めておくことも重要です。肺尖部から左右を比較して全肺野を見、次に縦隔陰影を頭側から、さらに骨軟部陰影と言うふうに、自分流でよいのでパターンを決めて読まれると見逃しが少なくなると思います。そして一番重要なことは、何か異常に気付いたら、迷わずCTを依頼することです。自分の指摘したところに異常がなかったという結果に恥じることなく、CTをご依頼ください。間違うことより、見逃すことが最も大きな問題だからです。また最近検討されているCT検診の意味もあり、患者さんには検診がてらCTを受けるように勧めてください。異常影が発見されてしまえば、後は専門医に任せればよいわけです。

 治療方針の決定

 肺癌の治療方針は、基本的に組織型と病期によって決めますので、肺癌の確定診断を得ることと同時に、病期診断を行ないます。確定診断方法としては、喀痰細胞診、気管支鏡検査、経皮的針生検、外科的生検などがありますが、できるだけ負担の少ない方法から行ないます。病期診断では、胸部CTにより胸腔内の進展状況を把握し、その他脳、肝、副腎、骨等の転移の有無をチェックします。また最近ではPETによるリンパ節転移や遠隔転移の検索も行ないます。

治療方法

 非小細胞癌(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)と小細胞癌とでは病期による治療方法が以下のように異なります。
非小細胞癌 小細胞癌
病期 主な治療 補助療法 主な治療 補助療法
I期 外科治療 化学療法 外科治療 化学療法
II期 外科治療 化学療法 化学放射線療法
IIIA期 外科治療
化学放射線療法
化学療法 化学放射線療法
IIIB期 化学放射線療法 化学放射線療法
IV期 化学療法 化学療法
 概ねこのガイドラインに沿って治療方法が選択され施行されます。しかし患者さん毎に特殊性がありますので、その方に最も良いと思われる方法が表と異なって選択されることもあります。今回の研究会が、皆様の日常診療の一助になれば幸いです。