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南圭会

「一般臨床医に必要な血液診療のポイント:貧血を中心に」

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平成18年10月11日(水)

名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学

直江知樹 先生
 貧血の中には,専門医への緊急紹介が必要な疾患から,最前線のクリニックで十分対応可能なものまで幅が広い.最近の特徴は,血液検査で偶然発見される貧血が多くなったことである.診断のポイントは家族歴,薬剤,既往症などに加えて,平均赤血球容積(MCV),網状赤血球数(Ret),血清フェリチンなどの血液検査であり,その鑑別は一般臨床医で十分可能である.また,貧血が契機となって様々な疾患が発見されることも多い.血液疾患はもちろんのこと良性・悪性腫瘍,慢性感染症,膠原病,肝臓疾患,内分泌異常など多くの疾患で貧血が最初の症状あるいは所見となりえる.また薬物による医原性貧血があることも銘記すべきであろう.

 代表的な貧血といえば鉄欠乏性貧血である.日本では女性の約10%が鉄欠乏性貧血で,約40%が鉄欠乏状態という報告がある.MCVが低いことに加えて血清鉄の低下,血性フェリチンの低下,総鉄結合能の上昇があれば間違いなかろう.問題はその原因である.生理出血,消化管出血,婦人科疾患,成長期では相対的な鉄欠乏状態が起きやすく,偏食もしばしば原因となる.勉強熱心なドクターが研究発表のため,入院患者から採血検査を繰り返している間に,鉄欠乏性貧血を発症したという「医原病」の例もある.治療としては経口の鉄剤が第一選択となる.

 鉄欠乏性貧血と間違えやすく,また患者数も多い貧血として二次性貧血がある.なかでも慢性リウマチ,慢性感染症,悪性貧血などに合併する「慢性炎症に伴う貧血」は,MCVの低下,血清鉄の低下を来たし,鉄欠乏性貧血と紛らわしい.その原因として炎症性のサイトカインが注目され,「炎症性貧血」とも呼ばれる.鉄はあっても利用出来ない病態と理解できよう.鑑別点のポイントは“血清フェリチンが下がっていないこと“である.

 高齢者では健常者でも貧血はくるものであろうか?軽度の貧血はその原因がわからないことが多く,「老人性貧血」とされてしまうことが多い.原因を丹念に検査すると,多くは臓器の潜在的機能低下(痴呆,骨折,萎縮性胃炎,腎機能低下など)や炎症性貧血,骨髄異形成症候群,薬剤性造血器障害,巨赤芽球性貧血など意外とその原因は多彩である.造血細胞自身の老化による,老人性造血障害はまずないといってもよいのではなかろうか.

 本講演では,血液検査異常から読み解く血液疾患の数々についても紹介し,第一線での診療に役立つ情報を提供した.