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南圭会

「胃癌診断の基本と最近の話題」

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平成17年8月5日(水)

愛知県がんセンター内視鏡部  中村常哉―先生

 胃癌にかぎらず胃疾患の診断の全般にわたることですが、その基本は、背景粘膜の性状を把握すること、どこにどういう病変があるのかを知ること、そして病変の性状による診断、の3つのことがあげられます。萎縮の有無はどうか。萎縮の広がりはどうか。腺境界部はどこか、などに注目して病変をさがすようにすることが重要であります。 胃底腺と幽門腺の境界はF-lineと呼ばれています。通常萎縮性胃炎は幽門腺からおこり口側へとひろがります。従って萎縮性胃炎が加齢とともに口側へ進展する場合、このF-lineが口側へ移動します。胃癌の発生の場を表現する場合、胃底腺領域内か否かはその組織型や肉眼型と深く関係しており重要です。
 F境界線内部領域(すなわち胃底腺領域)に発生する病変で、潰瘍性病変はほとんど未分化型癌であります。未分化癌は潰瘍化しやすく 80%は潰瘍化しています。逆にこの領域に良性潰瘍はまず認められません。F境界線内部に潰瘍を認めたらそれはまず、未分化癌と考えてよいでしょう。 粘膜ひだの肥大した病変では、スキルス型胃癌、悪性リンパ腫、巨大皺襞などがあります。悪性リンパ腫では、腫大した襞が空気量を増やすとのびるのが鑑別点になります。胃底腺性のポリープは、表面平滑な小さなポリープが胃底腺粘膜内に多発しています。通常、このポリープが認められる場合は背景粘膜に萎縮は認められず、H.pyloriは陰性であります。
 胃底腺外部領域(幽門線領域あるいは萎縮粘膜)には早期癌・進行癌・潰瘍・ポリープ・びらんなど多彩な病変が認められます。それらの鑑別は個々の症例で注意深い画像所見の読みが必要ですが、癌の場合は基本的には領域を有する不整な粘膜所見を読みとることが重要です。  
 F境界線近傍(すなわち粘膜襞のある領域の辺縁)の病変は、まず潰瘍性病変として胃潰瘍があげられます。これは胃角小弯に多く、加齢と共に萎縮が進むと口側に移行します。 陥凹性病変としてIIc(IIc+III)型癌が認められます。この組織型は未分化型癌である率が非常に高いといえます。なぜなら、同部は以前は胃底腺領域内にあり、萎縮が進んだ結果、F境界線近傍になったと思われるからです。またここには隆起性病変として過形成性ポリープが時にみられます。これらは中心陥凹を有する半球状ポリープで、ちょうど腺境界に沿ってならんで存在します。 
 F境界線による領域とは無関係に発生する病変は基本的に粘膜とは関係なく発生する病変であり、胃悪性リンパ腫や胃粘膜下腫瘍など、非上皮性の病変が主体です。
 癌の組織型と肉眼型の関係をみると、未分化型では早期癌では陥凹型(IIc, IIc+III)のみで隆起型は極めてまれです。進行癌では3型・4型が主体です。分化型癌では早期癌には隆起型、陥凹型いずれもみられます。進行癌には1型・2型が主体で時に3型がみられ、4型はまれです。  
 胃癌の組織型、肉眼型、発生の場の関係は相互に関連があり、これを胃癌の三角と表現します。組織型、肉眼型、発生の場を考えた診断をすることで、胃癌を深く理解することが可能となり、診断能力を高めることになると思います。また、病変を見逃さないことにもつながります。