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南圭会

「外来での慢性腎疾患の診かたと最近の治療」


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愛知医科大学 腎膠原病内科 普天間新生 教授
 慢性腎疾患の患者は外来へは血尿,蛋白尿,高窒素血症を指摘されたり,浮腫や尿量異常などを訴えたりして受診します.

 血尿を診るにあたっては,肉眼的血尿と顕微鏡的血尿がありますが,肉眼的血尿は泌尿器疾患だけでなく,急性や急速に発症する腎炎でも見られます.とくに,IgA腎症では急性上気道炎,急性胃腸炎などに伴い肉眼的血尿が起こります.

 血尿が見られたときは,それが糸球体障害によるものか,泌尿器科的出血(非糸球体性)かを鑑別していきます.尿沈渣で変形赤血球の比率や,赤血球円柱の有無,それに,付随する顆粒円柱や蛋白尿などにより糸球体性出血をある程度判断できます.この時,尿中の細胞を見るときは新鮮尿で,できるだけ早目に調べることが肝要です.血尿の起源は,出血性素因はもとより全尿路系,それに女性では生理の混入などがあるので,腎の形態学的(KUB,エコー検査,場合により泌尿器的検査)を組み合わせます.中年以降は尿の細胞診も必須です.腎炎性の糸球体性出血に限っては今までの臨床の蓄積から,血尿のみの場合はそれほど予後に影響は与えません.

 蛋白尿については,糸球体から出てきますので糸球体障害を示す重要な指標となります.正常者でも蛋白(アルブミン)はある程度糸球体からろ過されますが,そのほとんどすべてが尿細管で再吸収され,尿中へは出現しません.ですから,たとえ蛋白尿が陰性でも,この再吸収が極限状態にある場合もあります.この蛋白再吸収の過剰負荷が尿細管障害を惹起し,さらに腎機能障害をもたらす可能性があります.つまり,尿中へ僅かでも蛋白尿が出現していれば腎臓の中では異常な状態にあると考えられます.最近の報告では微量アルブミン(30〜300mg/day)出現でも生命予後が悪くなると報告されています.顕性蛋白尿(>300mg/day)は慢性腎障害を反映し,その量は腎障害とよく相関します.特に一日1g以上を示す場合は,その疾患の経過は注意すべきで,腎生検をすすめています.

 以上のことから,蛋白量を正確に把握することが重要になってきます.正確には24時間の蛋白尿を測定しますが,外来では一日蛋白尿測定に変わる指標として,随時尿の蛋白濃度(mg/dl)÷尿クレアチニン( mg/dl)が利用されます.また,蛋白尿は糸球体基底膜の炎症性変化の他,糸球体内圧上昇による蛋白尿出現が知られています.後者の時はACE阻害剤やARBの使用が威力を発揮します.

 腎機能の指標として,窒素化合物(BUN,Cr, 尿酸)やBMGが血清で測定されますが,腎クリアランスの測定も重要です.外来診療での24時間Crクリアランスの測定は困難ですが,最近は血清Crからいろいろな計算式が提唱されています.代表的なものがCockcroft-Gaultの換算式(体重×140−年齢)/72 x Cr,女性はこの値に0.85を掛ける)があります.これにより,その患者がどの程度腎障害があるかを推測できます.

 以上のように,蛋白尿,血尿,尿沈渣の所見,腎機能などによりどの種類の腎疾患でどの程度の病期かを推測し,治療に役立てます.

 血尿主体の疾患としては軽症IgA腎症,糸球体基底膜菲薄病,蛋白尿型としては膜性腎症,微小変化型ネフローゼ症候群があります.血尿+蛋白尿型を示す場合には糸球体増殖性の腎炎が多くみられます.この増殖性の腎炎にはIgA腎症の他,膜性増殖性糸球体腎炎,巣状糸球体硬化症などがこれに属し,しばしば腎機能低下を示し,腎不全へ進行します.

 進行性の慢性腎疾患の代表がIgA腎症です.この疾患は提唱された当時は予後良好と考えられましたが,30数年経った今日,必ずしもその予後は良好ではなく,注意深い観察と治療が必要と考えられています.

 予後不良因子として,蛋白尿(1g以上),高血圧,腎機能低下などがあげられます.高血圧については腎疾患のある場合は130/80mmHg未満が推奨されており,蛋白尿が1g以上みられる場合はさらに厳しくするとよいとのエビデンスがあります.このときの降圧剤として,ACE阻害剤,ARBが推奨されていますが,最近では併用が更に有用であるとの報告があります.ただし,両剤ともCrが高い時(Cr2.0mg/dl以上)は少量から開始することと,高K血症に注意する必要があります.

 外来でのこのような基本的な治療(コメリアン,ACE阻害剤やARBなど)と,最近の治療である扁桃腺摘出やそれにステロイドパルス療法を加えた治療がIgA腎症に奏効するとの成績があります.ステロイドパルス療法については,腎生検と扁桃腺摘出,それに初回のステロイド(メチルプレドニン500mg)投与は入院で行いますが,あとは外来療法で行っています.