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南圭会

「外来での高血圧治療の実際 −開業医からの質問に答える−」

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平成17年9月28日(水)

名古屋市立城北病院 循環器内科部長・副院長 佐藤孝一先生

質問@ 

塩分摂取が過剰で高血圧になっている人は高血圧患者の内の20〜30%といわれている.そうすると,高血圧の方全員に塩分制限を指導することは疑問である.1週間ほど減塩して,降圧する方だけに塩分制限すればよいのではないか?

回答@ いいえ,全員に減塩指導すべきです.なぜなら,正常圧の方でも塩分を過剰に摂取すれば,心肥大,心血管障害が生ずるといわれています.高血圧で食塩感受性が低い方であっても降圧薬の効果を増強させることができます.また減塩によって降圧薬の量を減らすこともできます.ただ残念ながら,外来診療の場で食塩感受性の検査は簡単にできません.
質問A 年齢55歳 高血圧 合併症なし.家庭血圧が120/70mmHgで外来血圧が150/90mmHgのような人にどのように説明するか?130/85mmHg未満になるように降圧薬を増やすべきか?

回答A この患者さんは降圧薬を服用されていますか?そうであれば白衣現象を示しています.医師ではなく看護師さんに血圧測定をしてもらってはどうでしょうか?もし,無治療であれば白衣高血圧です.両者ともリスクの層別化されてもし,異常が無いなら,白衣高血圧の場合,経過観察でよいと思われます.白衣現象では降圧薬の減量を考えます.

※ 無治療で医療者の前だけで血圧が上昇する現象を「白衣高血圧」,高血圧治療中で医療者の前で上昇してしまう現象を「白衣現象」と呼ぶ
質問B 健診で血圧が高いと指摘され,来院.どの程度の血圧がどのくらい持続したら,降圧薬を開始するのか?JNC6では1年くらい生活習慣の改善を指導し,それでも下がらない時,降圧薬を開始するとなっているが,高血圧治療ガイドライン2004ではどのように変わったのか?

回答B 降圧薬治療の開始時期は早くなっています.低リスク群:6ヶ月が3ヶ月へ,中等リスク群:3ヶ月から1ヶ月へ,高リスク群では1〜2週間から直ちにとなってきました.私は高血圧の重症度,2次性高血圧の鑑別をおこなってから降圧薬を開始します.その間に生活習慣の改善についての指導をしています.降圧薬を開始するまでに,患者さんといかに仲良くなるかが継続治療していく上で重要であると考えます.患者さんによっては高リスクでなくてもすぐに降圧薬を開始することもあります.
質問C 開業の場で2次性高血圧の鑑別診断はどこまでおこなえばよいのか?具体的な方法を知りたい.

回答C 特異な症状,検査所見の考えられない異常があれば,専門医に送るのが良いと考えます.もちろん,カリウムの正常な原発性アルドステロン症が多く存在するとも言われています.疑うことは大事ですが,その先は確定するための検査が必要になります.したがって,最初からルーチンに鑑別する必要はありません.症状,身体的所見,検査所見(一般検査)が大事です.それよりも降圧薬以外の薬の把握が大事です.即ち,薬剤誘発性高血圧を見逃さないことです.
質問D Jカーブ現象について

回答D Jカーブ現象とは血圧を過度に下げると臓器障害,血管事故が多くなるということです.報告によって色々ですが,その人に合わせて,とくに高齢者と臓器病変が強い方にはゆっくり降圧していけばよいと考えます.降圧薬の微量調節が肝心です.
質問E 降圧薬使用中に血圧が下がりすぎると害はあるか?

回答E 前問で記載しましたように最終降圧目標値まで急激に下げてしまうと害が出てきます.高齢者,臓器病変のある方はゆっくりゆっくり下げてください.急に下げなくてはならない病態の場合は専門医に送ってください.
質問F 「血圧が高いから眩暈がした」「眩暈がしたから血圧が上がった」などと,さも自覚症状があるように訴えて来る人がいるが,高血圧に自覚症状はあるか?

回答F 高血圧は「静かな殺し屋」で,特異的な症状はありません.
質問G β遮断薬の位置づけ

回答G 現時点ではARBとカルシウム拮抗薬そして少量の利尿薬(通常の1/4〜1/2)が基本です.心不全,心筋梗塞後,狭心症(異型狭心症は除く),頻脈の場合には選択されます.