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南圭会

「皮膚科と膠原病」

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平成17年5月25日(水)

社会保険中京病院 皮膚科 主任部長  臼田俊和 先生

膠原病とは

 膠原病はアメリカの病理学者Klempererによって1942年に提唱された疾患概念です.組織の基質(結合組織)を主体に、フィブリノイド変性という共通した病理組織学的所見を有する疾患群としてKlempererは6疾患(表1)を提示し,結合組織を中心に病変の場がある全身性疾患であることを報告しました.その後このような病変を特徴とする疾患は他にも数多くあることが知られるようになり,これら疾患の背景には自己免疫が存在していることも明らかになってきました.現在,膠原病・リウマチ性疾患として包括されている疾患は、表2に示すように多数のものがあります.

 本邦では膠原病・リウマチ性疾患という用語が一般的に使われていますが,成書によっては結合織疾患,自己免疫疾患なども用いられています.また,自己免疫疾患はアレルギー性疾患の一部として扱われる場合もあります(図1)

リウマチ性疾患について

 日本においては「リウマチ」というと関節リウマチ(Rheumatoid arthritis, RA)のことを指してしまうことが多いようですが,「リウマチ」の本来の意味は関節,骨,筋肉などの運動に関与する臓器に痛みを感ずる疾患を称して示しています.したがって「リウマチ学」には膠原病や類縁疾患のほか,乾癬性関節炎や痛風も含まれており,関節リウマチ(RA)はリウマチ性疾患の中の一疾患にすぎません.臨床的視点を中心として考えればリウマチ性疾患、病理形態学的観点から考えると結合織疾患,病因的にアプローチする立場から見ると自己免疫疾患というように表現されることになります.

膠原病の病因、誘因

 自己免疫現象が膠原病の発症には大きく関与しているものの,これのみが原因ではなく,遺伝的素因,細菌やウイルス感染,ホルモンなど多数の要因が複雑に関連して発症すると考えられています.膠原病では疾患特異性,臓器特異性の自己抗体が多数知られており,各々の疾患によって傷害されやすい標的臓器があることも特徴の一つです.膠原病の誘因・増悪因子としては,紫外線,感染症,ストレス,過労,薬剤などが代表的なものです.

膠原病の症状

 一般的な症状としては,発熱,易疲労感,多発関節炎が高頻度に認められます.レイノ現象も認められることの多い症状です.臓器障害は,肺・腎・肝・心臓・皮膚など多臓器にわたりますが,各々の膠原病によって特異的に侵されやすい臓器があります.皮膚症状は極めて多彩です(表3).特定の疾患と関連性の強い皮疹(特異疹)としては,蝶形紅斑(SLE),ヘリオトロープ疹(皮膚筋炎),皮膚硬化(強皮症),環状紅斑(シェーグレン症候群)などがあります.

膠原病の診断・検査所見

 膠原病の診断基準としては,厚生労働省から各疾患の診断基準が提示されています.実際の臨床においては,これらの診断基準を絶対的なものとして考えるよりも,臨床症状,検査所見,治療に対する反応,臨床経過を総合して最終的に診断することが大切になります.検査所見では診断に際して重要なものと病勢を把握する上で必要なものとに大別されます.診断に際して重要となるのは自己抗体の検出,特に特異抗体の有無です(表4).病勢の把握では,赤沈値,CRP,白血球数,一般生化学所見,尿検査,胸部X線所見が有用な検査所見となります.

膠原病の治療

 現在のところ根本的な治療法はなく,対症的治療法が主体です.膠原病患者では安静のみによって軽快する症例も多いので,薬物投与は安易に行わない方がよい場合もしばしばあります.症状の強さや疾患の進行度に応じてNSAIDs,ステロイド薬,免疫抑制薬などが投与されますが,常に副作用に注意することが必要です.膠原病者では薬剤過敏症状を生じやすいので,NSAIDs,抗菌薬・免疫抑制薬の投与は特に慎重に行うことが大切です.