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今日の喘息治療

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2005年3月23日 水曜日
藤田保健衛生大学 第2教育病院 呼吸器内科助教授 堀口高彦先生
  気管支喘息の疾患概念は,過去には気管支の攣縮による気道閉塞とその可逆性,種々の刺激に対する気道過敏性の亢進と理解されていたが,近年,慢性炎症であることが解明され,抗炎症薬である吸入ステロイド薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬などの普及とともに治療が飛躍的に進歩してきた。

  過去20年,年間6000人前後で推移してきた喘息死は,2002年には3773名にまで減少してきたが,欧米の喘息治療と比較すると充分に満足するものとは言い難い。

  EBMの流れに沿って1990年以降喘息治療ガイドラインが次々と発表されてきた。国際的ガイドラインは、WHOでつくられているGlobal Initiative for Asthma(GINA)が、2002年に改訂され,日本のガイドラインは、「喘息予防・管理ガイドライン(JGL98)」が2003年の秋に改訂された。

  気管支喘息の基本的病態が気道炎症であることより,成人・小児を問わず喘息治療の第1選択薬は吸入ステロイド薬である。

  エアゾール製剤は,モントリオール議定書に従い2005年からはフロンガスの使用が禁止され,代替フロンを使用したHFA-BDP製剤が使用可能となった。HFA-BDPは,平均粒子径が1.1ミクロンと従来の吸入ステロイドと比較して非常に小さいため肺内沈着率が51%と移行性に優れ,ドライパウダー製剤に比べ末梢気道炎症を改善させる可能性が 示されている。

  最近の吸入ステロイド薬のエビデンスとしては,Pauwel1) Sullivan2)らによりSTART(inhaled Steroid Treatment As Aegular Therapy in early asthma) Studyが報告され,軽症喘息においてBudesonide治療群は、プラセボ群と比較して喘息発作のない日数・FEV1.0・重篤喘息発作リスクの回数・経口や吸入ステロイド薬の追加使用・入院や救急治療回数・喘息治療にかかる医療費が有意に改善した。またGOAL(the Gaining Optimal Asthma controL)StudyがBateman3)らにより報告され,トータルコントロールの達成率はFluticason/Salmeterol群がFluticason群に比較し高かった。急性増悪の回数も有意に抑制されており, Fluticason /Salmeterol群により,より多くの患者で,より早く,より少ない量でコントロールが達成されることが示唆された。

  しかし,吸入ステロイド薬には直接的な気管支拡張効果・ロイコトリエンの遊離抑制作用・IgE抑制作用はない。すなわち,吸入ステロイド薬で充分な効果の得られない症例に対しては,吸入ステロイド薬を倍量するよりも,気管支拡張薬・ロイコトリエン受容体拮抗薬を併用したほうが有用な場合が多い。
  
  GINAでは,Step2より,吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の併用を推奨している。LABA自体は,抗炎症作用がほとんどないため必ず抗炎症薬との併用が望ましい。
 
  ロイコトリエン(LT)は,年齢,喘息の病型を問わず喘息の病態に深く関与しており,LT受容体拮抗薬は吸入ステロイドとは異なった抗炎症作用をもち国際的にも多くの有用性が示されている。著者らの検討を図1に示す4)。LT受容体拮抗薬は,高用量吸入ステロイドを使用している症例にLT受容体拮抗薬を併用すると喘息症状や呼吸機能が改善するとともに気道炎症のパラメータも有意に低下した。図2に,LT受容体拮抗薬の長期投与について,その臨床的有用性を示した5)。更にLT受容体拮抗薬が,上気道感染による急性増悪を抑制する作用を併せ持つことを示した(図3)。
 
  次に,最近話題のペットアレルギーについて話題提供した。喘息の既往をもつ40歳代の男性が,4年前から飼育していた体長約10cmのジャンガリアンハムスターに左手の中指を咬まれた直後に咳が出現し,アナフィラキシーショックで死亡したことがマスコミに取り上げられたことは記憶に新しい。このような悲惨な事態が二度と起こらぬよう医師としてペット飼育に関する情報,対策を社会に啓蒙することが重要と考え,喘息とペットアレルギーの最近の話題と問題点,及びその対策を表1,表2,表3に示した6)7)。
文献
1)Pauwela RA, Pederson S, Busse WW, et al . Early intervention with budesonide in mild persistent asthma-the START study. On behalf of the START investigators group. Eur Respir J 20 (Suppl 38);305, 2002.
2)Sullivan SD, Buxton M, Andersson LF, et al. The costeffectiveness of early intervention with budesonide once daily : Results from the START study. Eur Respir J 20 (Suppl 38): 43, 2002.
3)Bateman ED,et al.Can Guideline-defined Asthma Control Be Achieved?: The Gaining Optimal Asthma Control Study.Am J Respir Crit Care Med 170(8):836-844,2004.
4)Evaluation of the Combined Effect of Pranlukast during High-dose Steroid Inhalation.Arzneim.-Forsch./Drug Res.52,No.11,813-816(2002).
5)堀口高彦,近藤りえ子,宮崎淳一,ほか:成人気管支喘息患者に対するPranlukast長期投与の臨床効果に関する検討.日本呼吸器学会雑誌 41(10)696-703.2003.
6)堀口高彦:気管支喘息とペットアレルギー.いずみ 52(1)2-3,2005.
7)堀口高彦:気管支喘息とペットアレルギー.いずみ 52 (2)4-6,2005.