EBMトップページに戻る

風邪の予防にどのようなうがいが有効なのだろうか

この作業は,2006年1月24日に愛知県臨床疫学研究会の定例TV会議で行われました

シナリオ
往診に行っている93歳女性と68歳男性の患者さんがいます.一人は心不全と高齢化で寝たきり,もう一人は脊髄小脳変性症で在宅管理中で日中は椅子に座りっぱなしです.従来からお二人ともイソジンによるうがいを習慣にしてみえました

ところで最近,風邪の予防に水によるうがいが有効と言うことをテレビで取り上げていたという一般患者さんからの情報を耳にするようになり,1回調べてみることにした
Step 1 PECOの設定
TV会議システムを利用して宮崎診療所にいる宮道先生と,パソコンの検索をしながら討論する,県立愛知病院の吉田 力先生
P 気道感染を起こし易い基礎疾患を持った93歳と68歳の高齢者
E イゾジンでうがいをした場合
C うがいをしない場合,あるいは水でうがいをした場合,と較べて
O 気道感染の予防,肺炎の予防,入院の予防,発熱の予防
Step 2 情報収集 
UpToDateを使用し,一つもヒットせず
Cochrane libraryを使用し,5件ヒットするが,適切なものはない
PubMedを使用し下記の結果
検索用語にgargle(うがい)とupper respiratory infection(上気道感染症:風邪の医学用語)を使用し,clinical queriesでtreatment(治療)とspecificity(特異度)をクリックし検索,14文献がヒット.抄録をサーと見て適切だと考えたのが一番上に出てきた下記の論文
Satomura K, et al. A; Great Cold Investigators-I.. Prevention of upper respiratory tract infections by gargling a randomized trial.
Am J Prev Med. 2005 Nov;29(4):302-7.

BACKGROUND: Gargling to wash the throat is commonly performed in Japan, and people believe that such hygienic routine, especially with gargle medicine, prevents upper respiratory tract infections (URTIs). Its effectiveness, however, has not been established by clinical trials. DESIGN: Randomized controlled trial carried out in 2002-2003 winter season and analyzed in 2003 and 2004. PARTICIPANTS: Healthy volunteers (387) aged 18 to 65 years. INTERVENTION: Participants were randomly assigned to water gargling, povidone-iodine gargling, and usual care (control). Subjects in the two gargling groups were requested to gargle with water or diluted povidone-iodine at least three times a day. Participants were followed for 60 days. MAIN OUTCOME MEASURES: The primary outcome measure was first URTI incidence. Severity of URTI symptoms among incident cases was also evaluated. Both outcomes were assessed with a self-administered symptom record. Analyses were performed on an intention-to-treat basis. RESULTS: A total of 130 participants contracted URTIs. The incidence rate of first URTI was 0.26 episodes/30 person-days among control subjects. The rate decreased to 0.17 episodes/30 person-days in the water gargling group, and 0.24 episodes/30 person-days in the povidone-iodine gargling group. Respective incidence rate ratios against controls were 0.64 (95% confidence interval [CI]=0.41-0.99) and 0.89 (95% CI=0.60-1.33). A Cox regression (proportional hazard model) revealed the efficacy of water gargling (hazard ratio=0.60, 95% CI=0.39-0.95). Even when a URTI occurred, water gargling tended to attenuate bronchial symptoms (p=0.055). CONCLUSIONS: Simple water gargling was effective to prevent URTIs among healthy people. This virtually cost-free modality would appreciably benefit the general population.
Step 3 批判的吟味

(1) )結果は信頼できるか

研究方法 無作為化比較研究(RCT),PROBE法
対象患者 診療所・病院を受診した人の中から抽出された健康ボランティア18〜65歳
治療法 1回につき20mlの水道水またはヨード希釈液で3回うがいし,それを1日3回以上行う.平均年齢5.7才
比較 積極的には,うがいをしない
アウトカム 第一アウトカムはうがいを始めて最初の気道感染症*の発症頻度, 第二アウトカムは気道感染症の重症度
追跡率 387名が参加し,3名が日記記載ないため除外.したがって追跡率は99%.脱落した3名はヨードうがい群とうがいをしない群なので,最良シナリオ(ヨードうがいと,うがいなしは気道感染の発症が防げたものとする)にしたがい3名を気道感染が発症しなかったものと扱っても,イベント発症率(気道感染の発症)が高く全体の症例数も多いので,結果に影響はない
*気道感染症の定義 : 下記の(1)〜(3)の全てを満たした場合,気道感染症(ここでは風邪と呼ぶこととする)と診断した.症状の観察は対象者自身が記入したうがい日記により判定
(1)鼻症状と咽頭症状両者があること
(2)少なくとも一方の症状に2段階以上の悪化がみられること 
(3)悪化が見られた方の症状の持続が3日以上継続すること
インフルエンザは一般の風邪と伝染形式が異なると言う理由で,インフルエンザ様疾患に罹患した場合,その時点で打ち切り例としている
結果 (第一アウトカム)
水道水うがい(n=122) ヨードうがい
(n=132)
うがいなし(n=130)
2ヶ月の時点で気道感染を発症した人の割合 30.1% 37.2% 40.8%
1ヶ月あたりの気道感染発症頻度 0.17回/人 0.24回/人 0.26回/人
NNT(期間は1ヶ月) 対ヨードでは15
対うがい無しでは11
対うがい無しでは50
うがい無し群に対する相対危険(95%信頼区間) 0.64(0.41-0.99) 0.89(0.60-1.33)
 <コメント1> 

11人(年齢18〜65歳)が20mlの水で1回につき3回以上を1日3回以上行えば,うがいしない場合に比べて1ヶ月につき1人風邪を予防できる
あるいはうがいをしない場合1ヶ月につき4人に一人が風邪を引くが,前述の方法で水うがいを行うと6人に一人に減るとも言える

 <コメント2>

サブ解析で年齢ごとの風邪の頻度が調べられている.29歳以下では0.32回/月,30〜39歳では0.23回/月,40〜49歳では0.16回/月,50歳以上では0.10回/月.この傾向にはきれいな有意差が見られる.p<0.001.他にも職のある人が無職の人に比べて風邪が少ない(RR=0.68 95%CI 0.48-0.96)とか前年風邪を引いた人は,今年も引き易いなど興味深い解析が行われている
Step 4 患者への適応
この論文によると,18歳〜65歳の健康成人の場合,水によるうがいが最も風邪予防効果があった.したがってこの年代の方々には風邪の予防に水道水によるうがいを推奨することとした

一方シナリオのケースは,気道感染症を起こし易そうな基礎疾患を持った高齢者であるので,水道水によるうがいの予防効果は論文が示すほど顕著な効果は期待できないかも知れない.サブ解析によれば年齢が上がるだけでも風邪の罹患頻度は低下しているし...(図)

2通りの考え方を示します.みなさんはどちらの考えに近いですか
1.   シナリオのケースは高齢者なので,から推察されるように風邪は罹患しにくいと考える ここをクリック
2.   シナリオのケースは基礎疾患(心不全・脊髄小脳変性症)があるので,気道感染を起こし易いと考える ここをクリック