批判的吟味
(JAMA医学文献の読み方.中山書店,2001.P95-109にしたがって吟味)

引用文献
A Clinical Approach for the Diagnosis of Diabetes Mellitus -An Analysis Using Glycosylated Hemoglobin Levels -Peters AL et al. JAMA.1996:276:1246-52
批判的吟味者
伊藤伸介 2001年10月21日
Publication type
Meta-analysisを用いて作成したReview
論文のPECO
HbA1cとOGTTが同時に測定されたケースの感度と得意度
1.結果は信頼できるか(方法の吟味)
第一の基準
・総説(この場合meta-analysis)は特定された明確な臨床上の疑問を解決しようとしているか
  はい.糖化ヘモグロビンとOGTTの関連と言う明確な疑問を解決しようとしている.
・用いた論文の採用基準は適切か
  はい. Medlineを用いて1966-94年の間に,糖化ヘモグロビンOGTTを同時に行った研究を網羅的に検索し採用している.
第二の基準
・重要な関連研究が漏れている可能性はないか
  多分ない.MEDLINEで検索可能
な英語抄録が作成された論文だけが対象でああるから,MEDLINEにアップされていない(あまり重要ではないであろう)抄録が他言語で作成された論文が漏れている可能性がある.しかしながら, ちなみに日本人が著者であろう論文も5論文解析対象に含まれていた(引用文献27,28,29,32,33).
・採用した臨床研究の妥当性が評価されているか
  いいえ
・臨床研究の評価に再現性があるか
  2人以上の研究者が,独自に対象となる臨床研究を評価したかどうか記述されていないので,何とも言えない
・結果は研究間で同様か
  何とも言えない
追加:一般的な「診断用検査に関する批判的吟味」
標準的な診断を確定する方法と独立に,しかも盲検化されて比較されているか
  はい.OGTTとHbA1cは全く独立して解析したとされている
実際にその検査の対象となるであろう患者群において検討されているか
  はい.Cystic fibrosisと妊婦以外のHbA1cとGTTが同時に施行された症例が全部入っている
実際にその検査の対象となるであろう患者群において検討されているか
  はい.収集した18論文の対象は,高危険群(5論文),陽性者スクリーニング(4論文),DM可能性が高い(5論文),自己申し出による(4論文).いずれもGTTとHbA1cの検査が妥当と思われる.
¨ 研究の対象となった検査結果に関わらず,標準的な検査が行われているか
  はい.標準的検査として75gGTTが採用されている.
検査方法は実行可能なように明確に記載されているか
  はい.血糖測定に全血を用いたときの補正法(1.14を掛ける),50g,100gを用いたときのGTTの結果補正法が記されている.
2.結果は何か
(表1) 単純にOGTTの結果をスタンダードとしてHbA1cの感度,特異度,LRをみると
HbA1c 感度 特異度 LR+ LR-
6.3%以上 66% 98% 33 0.35
6.8%以上 48% 100% 0.52
7.3%以上 36% 100% 0.64
(表2) 最終解析対象となった8984例のHbA1cは3層性の分布を示した(原本のFigure2 右図).第1群はHbA1c5.2%を中心にして分布する群で,この群のHbA1cはOGTT正常群のHbA1c5.3%とほぼ正確に一致している.第3群はHbA1c10.4%を中心に分布する群で,この群は糖尿病群と考えられる.残りの第2群はHbA1c6.4%を中心にして分布する群で,正常でも糖尿病でもない未決定群と仮定できる.
  ここで,感度を第3群に属する症例の中で,カットポイントとされたHbA1c以上の数字を示す症例の確率,特異度を第1群に属する症例の中で,カットポイントとされたHbA1c以下の数字を示す症例の確率と定義して,HbA1cの特性を見ると下記の表のようになる.
カットポイントとなるHbA1c 感度 特異度 LR+ LR-
5.5% 100% 69.1% 3.2 0
6.0% 100% 90.9% 10.2 0
6.5% 100% 98.5% 78.5 0
7.0% 99.6% 99.9% 782 0.003
7.5% 98.9% 100% 0.01

3.結果は自分の患者の診療に役立つか

・結果を自分の患者の診療に適用できるだろうか
  はい.患者の受け入れさえあれば,HbA1cもOGTTも日本の保険診療の枠の中で,容易に実行できる.
・その検査結果によって患者管理が変わるか
  はい.薬物療法が必要な患者の把握には,HbA1cが重要であることを再認識できた.従来以上にOGTTは行わずに済むようになった.
・患者は検査結果によって得るものはあるか
  はい.シナリオの患者はHbA1cは6.8%であった.したがってOGTTを行った場合,糖尿病と判定される尤度比は∞である(表1より).つまりOGTTを行わなくても,OGTT上糖尿病域である確率が100%であることがこの時点で判明した.したがってこの患者はOGTTを行わずにOGTTの結果を知ることができた.